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改正国籍法成立。DNA鑑定は不要。思い出すのはドイツのカッコー法案。カッコーのヒナ。 [気になるニュース]

改正国籍法が成立だそう。

日本人の父親、外国人の母親が「婚姻」していなくてもよく、
父親の「認知」が条件。
偽装認知を防ぐためと言う
DNA鑑定は導入されなかったようです。

2008年12月5日。
《改正国籍法が成立 国民新・新党日本は反対》
http://www.asahi.com/politics/update/1205/TKY200812050149.html

このニュースで思い出したのは、
ドイツの「カッコー(のヒナ)法案」。

あ、これは自分だけがそう言っているのかも。

父親による、母親の同意を得ない、
DNA鑑定を禁止するという法案です。

母親は生んだ子が自分の子であることは明白。

しかし父親は、その子が自分の子であるかどうかの、
確信をもつための手段は長い間、ありませんでした。

この不安と人類の父親は、長らく闘ってきたわけですね。

ようやく出来た科学的に証明する手段の一つがDNA鑑定です。
(まだ精度に関し問題もあるようですけれど)

この父子関係を確定するDNA鑑定をしてはいけない
という法案を提出したのがドイツです。(2005年)

ドイツ・野中博士のコラム。
《カッコーのヒナ》
http://www.weleda.jp/nonaka/21.shtml

なぜ「カッコーのヒナ」なのかというと、
カッコーは、「托卵」という習性があるから。

カッコーは自分で卵を孵化せず、
他の鳥の巣に卵を産み付け、
その鳥に育てさせるのです。

その際、カッコーのヒナは、本来のその鳥の卵を
巣の外に押し出してしまいます。

かくしてその巣の親鳥は、我が子ではなく、
カッコーの子を必死に育てるということになるのですね。

Yahoo!百科事典
《托卵(たくらん)》
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E6%89%98%E5%8D%B5/

という訳で、野中博士が書いていらっしゃるように、
《ドイツで父親が実子と思い込み、他人の子とは気づかないことを
「カッコウのヒナ」とよぶのはここから出ています。》

ドイツの動きに関してですが、
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/23501/02350112.pdf
から事実関係を抜き出します。

1998年 親子法改革  父親の認知宣言と母の同意で父子関係を認める。

      制度を悪用する母親が増加
        在留期限の過ぎた母親が、ドイツ人ホームレスに認知を依頼。
        ドイツ人となった子に伴い、母も在留資格を得る。

2008年3月13日 「父子関係の認知無効の権利を補足する法律」制定

     偽装認知によって子や母親の入国・滞在が認められている
     ケースに限り、認知無効を求める権利が、管轄官庁に与えられた。

入り口(国籍取得)はゆるめて、
偽装認知に関してのみ、職権で否定できるようにした
というのがドイツの流れのようです。

ドイツでは国籍に関し、血統主義に加え、
一部、出生地主義を採用しました。

血統主義では、ドイツで生まれても、
母親、父親が外国人の場合、
子はドイツ国籍を取得することはできませんでした。
(日本も同様。父母両系血統主義)

けれど、国籍法(移民法)を改正。
ドイツに永住意志のある外国の両親を持つ子供で
ドイツで生まれた者は、出生と同時に両親の国籍と
同時にドイツ国籍も自動的に与えられることになりました。
(23歳までに1つの国籍を選択。出生地主義)
http://yabe.t.hosei.ac.jp/kakenhi/ronbun/pdf/shimizu.pdf

認知については、父子間に必ずしも血縁関係がなくても、
社会的・家族的関係があれば、有効となります。

現在、父子関係については、
海外でDNA鑑定を義務(必須条件)としている国はないようです。

日本の法制度の下で、今回の国籍法に限らず、
父子関係を認める際に、DNA鑑定はもちろん
義務づけられていません。

旧国籍法の場合、子に国籍が与えられなかったのは、
1,父親が日本人。母親が日本人以外で婚姻関係にない場合。

以下の場合は、すべて国籍が認められています。
2,父親が日本人で母親が日本人以外でも婚姻関係の場合、
3,母親が日本人の場合、
  父親が日本人以外であっても、婚姻の有。
4,母親が日本人。父親が日本人以外。婚姻なし。
  
最高裁は、1の場合にのみ子に国籍を認めないのは、
法の下の平等に反して、違憲としました。

今回の改正では、1の場合の子に国籍を与えた訳ですが、
その際に、DNA鑑定の義務付けなかったのは、
ある意味当然です。

この場合のみに義務付けすることは平等則に反します。
行うなら、
すべての場合に義務付けしないといけないことになります。

では、義務付けは適当なのでしょうか?

「偽装認知を防ぐために必要」との主張があります。
上のドイツのような例です。
(それにしてもドイツは、事前に手続き要件としては認めていない。
なおドイツは、DNA鑑定について現在、法律を作成中だそう)

海外在住の外国人の母親が、
父親でない日本人の男に依頼し、認知をしてもらい、
子を日本人にしてもらうケースが考えられる。
これを防ぐために、DNA鑑定を義務づけろと。

父子関係の認定に関しては、
DNA鑑定は有力な手段ですが、唯一の手段ではありません。
他にも様々な方法で認定が行われています。
ですので、DNA鑑定を義務づけなくても、
偽装認知を防ぐことは可能です。

さらに、逆の場合のことを考えてみましょう。

海外に行き、女性と関係を持ち、母、子を放置して
逃げ戻った男性。
血のつながった子であっても、出来るなら面倒は見たくない。

そんな男性にとって、国籍取得のための訴訟で、
手続き要件としてDNA鑑定を義務づけるのは、
どうなのでしょうか?

DNA鑑定が国籍取得の手続き要件とされた場合、
そうした男性は、DNA鑑定を拒否。
そうすれば、母、子は、手続き要件を欠くとして、
国籍を獲得することは不可能となります。

鑑定を拒否することに関し、何らかのペナルティを設けたとしても、
それが軽ければ、男性は、拒否して、
子が自分の子と認められない方が扶養義務も負わず、
得ということになります。

これはいかにも不正義な結論ですね。

DNA鑑定を手続き要件(必須)とせず、
それも含めた手段で総合的に判断して決めるという方が、
より正義にかなう結論を出せるような気がします。
(繰り返しますが、これでも偽装認知は防げます)

ところで、新党日本の田中代表は、
《「DNA鑑定制度の導入と父親の扶養義務の責任明確化を
(国籍法に)明記しない改正は『人権侵害法』に他ならない」と》
発言されたと書かれています。

これは、どういうケースを想定しているんでしょう?

DNA鑑定制度を導入(義務化)しても、
日本人男性が外国人女性に子どもをどんどん生ませ、
認知して、日本国籍を取らせたはいいが、扶養義務がないと、
結局は、母子が生活に困る。
だから、扶養義務をつけろということなのかなー?

どうもよくわかりません。

下のブログでも推奨されていますが、
《いしけりあそび》の
《ほんとうは人身売買のことなんてどうでもいいくせに
~“No pude quitarte las espinas” 》では、
http://blogs.yahoo.co.jp/isikeriasobi/56014650.html
改正阻止論者がありえないケースを想定していることが、
詳しく書かれています。
田中新党日本党首の考えとそれに対する反論も。

なおDNA鑑定に関しては、きわめて制限的に
フランス他ヨーロッパ各国が、
移民に関して、導入を認めています。

国会図書館の外国の立法例の資料。

《フランスにおける2007年移民法
-フランス語習得義務からDNA鑑定まで-》

フランスのみならずヨーロッパ各国の
DNA鑑定に関して書かれている。
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/237/023702.pdf

ブログ《la_causette》の
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/
2008年12月5日のエントリー
想像力の方向と読解力
http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2008/12/post-d617.html
このブログには上のエントリーの他に、
国籍法改正に関するエントリーがいくつかあります。
著者は法律の専門家。問題を精密に論じられています。

「Yahoo!百科事典」、《親子鑑定》
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E8%A6%AA%E5%AD%90%E9%91%91%E5%AE%9A/

それにしても、国会の審議のやり方は、異常でしたね。

     


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