なぜ?
もちろん、中国の実効支配にしたい訳ですが、
この所、動きをみせているのは、中国側に、
以下のような懸念があるからだそう。
それは、「実効支配が50年続くと国際法の判例で
尖閣諸島が日本の領土として定着しかねない」
というもの。
尖閣諸島が、日本に返還されて50年は、
2022年5月だそう。
逆にいうと、あと10年がんばれば……
ということにもなるのですが、
それにしても、実効支配50年で、
その国の領土にというのは、
国際法の判例として認められて
いるのでしょうか?
そして、日本をとりまく領土問題で気になるのが、
日本が実効支配していない、竹島と北方四島。
竹島は、1954年6月には不法占拠が
始まっていますので、すでに50年以上、
不法占拠が続いています。
不法占拠=実効支配となるのか?
《8.「李承晩ライン」の設定と韓国による竹島の不法占拠》
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/g_senkyo.htmlまた北方四島は、第二次世界大戦後、
1945年8月、9月以降ですから、
こちらも、優に50年を越えています。
池上彰さんの竹島問題の解説中に
以下の記述があります。
《実効支配が50年続くと、その領土は実効支配していた国のもの
と認められることになっています。
韓国が竹島を実効支配するようになったのは1954年。
そのままにしておいては、国際法上、竹島は韓国のものになってしまいます》。
おお、これは問題ですね?
日本はどうしているのか?
《日本としては、それを阻止するため、韓国の実効支配を認めない
というアピールをしておかなければなりません。そこで、毎年韓国に対して、
「竹島は日本の領土であり、そこを韓国が不法に占領していることは
認められない」という口上書を提出しています。》
http://www.ewoman.co.jp/2005_news/gimon/15/04.htmlうーん、なるほど。
北方四島に対してもそうなんでしょうね。
実効支配50年というのは、50年間、
他の国が実効支配について、異議を唱えていない、
ということが必要となるようです。
どこかの国が実効支配について、異議、反論、
自らの領土である旨主張した場合は、「紛争地域」となり、
平穏な継続=実効支配と認められないようです。
「国家権能の平穏かつ継続した表示」が必要なんですね。
《国際法から見た竹島問題》
http://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/H20kouza.data/H20kouza-tsukamoto2.pdf《竹島は韓国が実効支配しているといった言い方がなされることがあるが、
実効支配というのは、国家権能の平穏かつ継続した表示
(行政権、司法権の行使など)のことであって、領有権紛争が発生した後に
韓国が日本の抗議を受けながら行っている一連の行為は、実効支配の証拠にはならない》
あー、だんだん、大学時代の国際法で習ったことを思い出してきました。
譲渡、
売買(例えば、アラスカ)、
交換 (例えば樺太千島交換条約)、
割譲 (例えば、下関条約での台湾)、
先占 (確か
、日本が竹島について、主張している根拠はこれ、
日本政府は、先占と主張したことはないようです。失礼しました。
日本政府は、「歴史的な権原」さらに「実効的占有」に基づく権原で、
置換、補強することで、領有権を確立した領土としているようです。
尖閣諸島については、1895年、明治28年に閣議決定に基づき
日本領に編入する措置がとられましたが、日本政府はこの措置を
国際法上有効な先占の行為であると主張しています)、
添付 (自然現象や埋め立て等で土地が拡張する場合)、時効とか、
あったなー。
(国際法だけでなく、民法でも同様)
《Web竹島問題研究所》
http://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/外務省
《竹島問題》
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/index.html追記
○コメント欄に頂いていますが、
「実効支配が50年続くと国際法の判例で尖閣諸島が
日本の領土として定着しかねない」や、
私が引用した、ジャーナリストの池上彰さんの、
「実効支配が50年続くと、その領土は実効支配していた国のもの
と認められることになっています」の判例の存在、主張の根拠について。
まず、上記のようにして土地の所有権を得るのは、
民法だと「取得時効」となります。
国際法の場合に、民法の考えを援用し、
領土を「時効」で取得できるのか?
これについては、
上の《国際法から見た竹島問題》中に書かれています。
《時効は、自国の領土でない土地を領有の意思を持って相当期間平穏公然に
統治することにより当該土地の領有権を取得する場合であるが、
国際法では国内法のように取得時効の完成に必要な期間が定まっているわけでなく、
領土の取得方法として時効を挙げないこともある》。
すなわち、領土取得の権原として、時効をあげない考え方もあり、
時効を権原として認めるとしても、実効支配の期間の長さと
平穏の程度については、学説上争いがあり、まだ定説はないようです。
Yahoo!百科事典《領土(りょうど)》
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E9%A0%98%E5%9C%9F/《領土は、添付、侵食などによっても増減するが、
割譲、交換、売買などによって移転する》。
時効はあげられていません。
他方、平凡社の世界大百科事典の《領土 りょうど territory》では、
《 国家がある土地に対する領有権を取得するために必要な法律上の根拠を領有の権原という。
伝統的には,割譲,先占,時効,併合, 征服,添付の 6 種の権原が認められている》。
と時効をあげています。
こちらから、ひくことが可能です。
《ネットで百科@Home》
http://www.mypaedia.jp/netencyhome/学説は定まっていない状況ですが、
判決、判例はどうなっているのか?
「時効」による領土取得を認めた判決があり、
それが、国際判例となっているのか?
もっと限定して、
「50年、実効支配したから、その国の領土になる」
旨の判決・判例はあるのか?
コメント欄の方が書かれている通り、私が調べた限りでは、
現在のところ、そうした判決、国際判例はないようです。
(カシキリ/セドゥドゥ島事件では、時効により権原を取得できる
ことを認めており、4要件にも言及しているものの、
具体的な判断としては、取得時効を認めていない)
念のために書き添えますが、
「50年の実効支配で領土取得との国際判例がある」云々
と主張しているのは、私ではありません。
《「実効支配が50年続くと国際法の判例で尖閣諸島が
日本の領土として定着しかねない」(日中軍事筋)との強い危機感がある》
というのは、共同通信が取材し、その配信を受けた産経新聞、
日本経済新聞などが紙面に掲載したものです。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120321/chn12032120150002-n1.htm「日中軍事筋」がそのように考えていると。
なお記事中には、国際判例、学説など、
根拠は紹介されていません。
また池上彰さんは、「実効支配が50年続くと、その領土は
実効支配していた国のものと認められることになっています」
とリンク内で断定的に述べられていますが、そこでもその主張の
根拠はあげていらっしゃいません。
(氏の著作などには、書かれているかも知れません。
申し訳ありませんが、そこまでは調べていません)
○判例ではありませんが、イギリス領ギアナとベネズエラ間の紛争を
仲裁により解決するために、1897年にイギリスとアメリカ間で、
結ばれた条約で、
「50年間の敵対的保有または時効は有効権原となる」と定められたようです。
下記、42P、「時効」の項参照。
《(2)戦後における竹島問題
竹島の領有権をめぐる戦後の動向について 中野徹也》
http://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/web-takeshima/takeshima04/takeshima04-02/index.data/-06.pdfメモ
国際司法裁判所
http://www.icj-cij.org/homepage/index.php?lang=en○acquisitive prescription
territory
duration,length
○《国際司法裁判所(ICJ)について》
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/shihai/pdfs/icj.pdf○《国際司法裁判所(ICJ)-よくある質問-》
http://unic.or.jp/unic/single_event/1043/《Argument from Roman Law in Current International Law:
Occupation and Acquisitive Prescription
Randall Lesaffer* 》
http://ejil.oxfordjournals.org/content/16/1/25.full.pdf+htmlhttp://arno.uvt.nl/show.cgi?fid=80816《c) Prescription demands that the Territory's occupation must be peaceful for at least 50, 100 years.
"Even in the past when the TRADITIONAL INTERNATIONAL LAW recognized conquest as a valid mode of acquiring territory, ACQUISITIVE PRESCRIPTION, the same author maintains, "DID NOT OPERATE IN CASES WHERE POSSESSION WAS MAINTAINED BY FORCE."
"PRESCRIPTION is the manner of acquiring property by a long, honest, and uninterrupted possession or use during the time required by law. The possession must have been 'possessio longa, continua, et PACIFICA, nec sit ligitima interruptio' (long, continued, PEACEABLE, and without lawful interruption)" http://www.taiwandocuments.org/sovereignty.htmFrom the Book THE ACQUISITION OF TERRITORY IN INTERNATIONAL LAW - Manchester University , Pg. 52:》
http://www.princegharios.com/faqg/《世界の領土・境界紛争と国際裁判
外交交渉と司法的解決の採用を目指して
金子利喜男 》
http://senkakujapan.nobody.jp/page042.html《 国際法判例百選〔第2版〕収載判例リスト》
http://www.yuhikaku.co.jp/static/hyakusen_kokusaiho_list.html《V 領 域》
《27 取得時効――エル・チャミザル事件(国際国境委員会仲裁1911・6・15判決)●池島大策》
エル・チャミザル事件(国際国境委員会仲裁1911・6・15判決)は、
http://untreaty.un.org/cod/riaa/vol_XI.htm中、
http://untreaty.un.org/cod/riaa/cases/vol_XI/309-347.pdfエル・チャミザル事件は、時効の中断事由。
《世界の領土・境界紛争と国際裁判―民族国家の割拠から世界連邦へ向かって (第2版)
金子 利喜男【著】明石書店 (2009/05/20 出版)》
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4750329789.html追記
2019年9月12日
《( 11/03/05 )
一般社団法人 ディレクトフォース 4月勉強会
テーマ:「国際法から見た尖閣諸島問題」》
http://www.directforce.org/benkyoukai_report/ben_201104.html《拓殖大学政治経済研究所主催公開講座
2013年10月19日(土)
国際法からみた尖閣諸島問題
中国の主張の何が間違っているのか。日本は如何に対処すべきか。
ⓒ 拓殖大学政経学部教授 安保公人 2013年》
https://www.takushoku-u.ac.jp/summary/files/376_political_economy_131019peri_resume.pdf